近年、派遣として働く方が多く見られるようになってきました。
時代の移り変わりに伴い、仕事の仕方にも多様性が出てきたことが目に見えて現れたひとつだと思います。
私自身も5年前、派遣会社に登録してゲームデザイナーとして働き始めました。
正直、苦悩を味わい辞めてしまおうかと思ったこともあります。
以下、入社から現在までの私のリアルな体験談をお話しします。
なぜ派遣の道を進んだのか
なぜ正社員ではなく派遣で?そういった疑問をよく投げかけられます。
よくある話では、「時短で働きたいから…」という理由や、「扶養内で働きたいから…」という方も少なくないと思いますが私は違いました。
求人サイトに登録してデザイン系の求人に片っ端から応募しましたが……受からないんです。
面接が!もう全然受かりません。
私のキャリア不足もあると思いますが、面接官にあまりこちらの情報も渡せていなく、
時間もない中で面接を行うので自分のことを伝えきれないということもあったと思います。
求人サイトから応募して書類選考で落とされる日々。
就職活動を始めて数ヶ月経つころにはもうヘトヘトで、サイトでどんな求人を見ても自分が不合格になるイメージしか湧かなくなっていました。
誰か助けてほしい…なんでもいいから働きたい…。
そんな時、「ゲーム業界に強い人材派遣!」というweb広告が目に入ってきました。
藁にもすがる思いで広告をクリックし、人生初の派遣登録。
すぐに担当の方から連絡があり数日後に面談を組んでもらいました。
人材派遣会社に面談へ
そして面談当日。
普段着でもいいと書いてあったのですが、本当に普段着で行ったら笑われたという体験談を聞いたビビリな私はばっちり就活スーツでいきました。
もしかしたらプロフィールなどを作成する必要があって、写真を撮られるかもしれない…それを求人を出している企業に渡すかもしれない…。
だとしたら少しでも印象をよくするためにスーツで行かなきゃ!と思ったのです。
(結果、特にそのようなことはなかったのですが。)
次に持ち物ですが、筆記用具や身分証明書、年金手帳、離職証明書を持参するようにとのことでした。
履歴書と職務経歴書は派遣登録の時点でweb上でPDFやWord形式のものをアップロードするか、サイトのテンプレートに書き込むのですが、念のため紙媒体でも持っていきました。
そしてデザイナーに絶対必要なもの。それは「ポートフォリオ」です。
これをもっていかなくては話になりません。
ポートフォリオはその人のクリエイターとしての力を見る大切な資料です。
手を抜かず、見る相手のことを考えて作ります。
ポートフォリオサイトを作ってそれを紹介するのもいいですが、アクセスするのに時間がかかりますしネット環境のある場所でしか見られないのであまりお勧めできません。
私はバナーや画面のデザインとモーションのデザインをしていたので静止画作品は印刷してファイルにまとめ、動画作品はCD-Rにデータを入れて持っていきました。
ポートフォリオサイトのことも担当の方にお伝えしたところ、とてもスムーズにこちらの職種を理解してくださり求人もその場でポンポン出してもらえました。
応募先を何社かに絞ると、人材派遣会社が求人に応募してくださり企業とのやり取りまで行ってくれました。
企業との面接時には担当者も一緒に付き添ってくださり、私が言葉に詰まったときにはフォローしてくださりました。
その結果、なんと見事に合格!
晴れて派遣社員として企業で働くこととなりました。
派遣の契約事情
気になる契約内容ですが、派遣契約は大体3ヶ月単位で契約継続か契約終了が決まります。
私は結果的に3年もの間、派遣契約を継続していただけました。
福利厚生や有休休暇などの制度は常駐先ではなく人材派遣会社の規定に従うことになります。
厚生年金も健康保険も組まないという悪徳なところは近年無くなりつつありますが、事前に調べておくといいでしょう。
正社員からの派遣いじめ!
仕事に慣れ始めたころ、今まで軽めだった作業量は正社員と変わらない量になり、残業すれば嫌味を言われ、残業しないで帰れば「これだから派遣は困る」と言われ始めました。
そう、これがあの、体験談投稿などで有名な……派遣いじめ!
なんと直属の上司(正社員)から派遣いじめをされ始めたのです。
最初は自分が何か気に障ることをしてしまったのかと思いましたが違いました。
同じチームの人に聞けば、上司はもともと雇用形態によって相手への態度をかえる人だそうで、特に派遣や個人事業主といった直雇用でない立場の弱い人間をいつもいじめているというのです。
そういえば作業量が増えだしたあたりからチームのデザイナーが一人辞めていました。
その人も派遣でした。
つまり、派遣さんの退職により上司のターゲットが私に移ったのです。
それからというもの、毎日が壮絶でした。
挨拶を返してもらえなかったり、今日のタスクを報告し合う会議で私の順番を飛ばされたり。
声をかけて舌打ちをされたこともありました。
耐えかねて何度もディレクターに相談したのですが、「お互い歩み寄って」「僕からも注意しておくから」という返事ばかりで全く改善はされませんでした。
月日が経つほどいじめは加速し、「派遣なんだから会社のウォーターサーバーは使っちゃダメ」「そんなんじゃ正社員になれないね」と吐き捨てるように言われたり、わざときついスケジュールを組まれたり、どうでもいいリテイクを繰り返させて納期が守れなければ私のせいだと責めたりもされました。
灰色の毎日。
会社に行きたくない…と思いながらも無理やり出社していました。
それでも辞めなかったのは、仕事が好きだったから。
自分が担当するゲームに愛着が湧き、上司以外の人たちとはとても仲良くやっており、なによりクリエイティブに全身全霊をかけられる環境が大好きだったからです。
そしてディレクターがほのめかした「ゆくゆくは正社員になってほしい」という言葉を信じていました。
これも、よくある引き留めるだけのセリフだとわかっていたのに信じていました。
私だって本当は正社員で働きたかったのです。
3ヶ月毎に契約の心配をすることなく、直雇用で安定した収入の見込める正社員になって安心した生活がしたかったですし、親も安心させたかったのです。
だから耐えました。
いつか正社員になれると信じて。
派遣から正社員にはなれない?
派遣契約から2年が経ちましたが、正社員化の話は一向に進みませんでした。
それもそのはず、上司の推薦がないと正社員にはなれないのです。
私を標的にしていた上司が、推薦してくれるはずがありません。
周りの友達にも派遣として働いている人が何人かいました。
その体験談を聞くと、環境に不満があったり仕事のない期間があったり、
誰も正社員にはなっていませんでした。
もう私も若くないのに正社員になるのは絶望的。
いくら今の仕事が好きでも、こんなんじゃ将来苦労するのが目に見えている。
……転職しよう!と心に決め、人材派遣会社の担当者にも転職の意思を伝えました。
雇用形態の変更
そんな時、会社が唐突にほかの会社に吸収されました。
転職したいと思っていたとはいえ、いきなりは困る!この先どうなっちゃうんだろう。
とその時はずいぶん焦りました。
会社が吸収されたことにより人事のメンバーも変わり、新しい人事が現状を把握するための面談が全メンバーに個別に実施されました。
その面談で私は洗いざらいすべて話しました。
上司からいじめを受けていること。ディレクターに訴えても解決してもらえないこと。
契約を切り、転職したいということ。
そして、何よりデザインの仕事が大好きだということ。
すると思ってもいない通達が。
通日後にまた面談が組まれ、なんだろうと不安になりながら受けると、それは契約社員へのオファーでした。
「会社として君に辞めてもらいたくはない。現在のチームから移動してもらい、上司とは会わないですむようにする。」
そういっていただけました。
私は即承諾。
2回の面談を経て契約社員として直雇用していただけることになりました。
いきなり正社員というわけにはいきませんでしたが、それでも大きな一歩を踏み出せたことに変わりはありません。
派遣登録してよかったこと
派遣は、登録自体はとても簡単です。
人材派遣会社とのやり取りの中で自分の方向性も見直せるので登録してよかったと思います。
半面、常駐先の直雇用にはなりにくいという現実もあります。
人材派遣会社の正社員になるということも可能ですが、それも狭き門です。
しかし自分に合わない職場からは数ヶ月で移動できるというのは大変大きなメリットです。
いろんな体験がしたいという方には向いていると思いますので、
休職中の方は登録だけしてみるのもいいかもしれません。
また、私のように思わぬ方向へ進み自分の希望の仕事ができるようになるかもしれません。
辛い道を来ましたが、私は派遣で働いてよかったと思います。