転職を考えるときや失業をしたときに、仕事を見つける手段としてまず思いつくのがハローワークと派遣会社かもしれません。
では、どちらで仕事を紹介してもらうのがよいのでしょうか?
両者の違いを知っておくことは、希望の仕事を見つけるカギとなりそうです。
ハローワークとは
そもそも「ハローワーク」では、何を行っているのでしょうか?
簡単に言えば、就職支援・雇用促進のために厚生労働省が設置した行政機関で、職業紹介事業を行っているところです。
正式には「公共職業安定所」と言いますが、現在は「ハローワーク」と呼ぶほうが一般的です。
ハローワークは全国に設置されており、仕事の斡旋だけでなく、雇用保険に関する手当や助成金の支給、公共職業訓練の斡旋なども行っています。
失業したときの失業手当の手続きや管理もハローワークで行います。
ハローワークは国の政策として運営されているため、資金は税金で賄われています。
派遣会社とは
派遣会社は「一般労働者派遣事業」にあたる民間企業になります。
求職者を派遣スタッフとして雇い、人材を必要としている企業に期限付きで派遣するという雇用形態で、派遣法のもとで運営されています。
派遣会社の場合、派遣社員の給料の20〜30%が派遣会社のマージンとなり、それによって会社の経営が成り立っているわけです。
ハローワークと派遣会社はここが違う
それでは、具体的にはどのような違いがあるのでしょうか?
詳しく見ていくことにしましょう。
利用の仕方
ハローワークの場合
ハローワークを利用するには、まず最寄りのハローワークに出向き窓口で「求職申込書」を受取ります。
希望職種や賃金などの必要事項を記入し窓口に提出すると、「ハローワークカード」が発行されます。
その後、仕事の相談や紹介・求人検索用の端末が利用できるようになります。
また、ハローワークカードに記載された求職番号があれば、ハローワークの端末だけでなく自宅のパソコンやスマホからも求人の検索ができます。
ハローワークカードの有効期限は登録月を含めて3ヶ月ですが、その後も更新することで利用を継続することが可能です。
応募したい求人が見つかったら、ハローワークの担当者から企業に募集状況などを確認してもらい紹介状を書いてもらいます。
ただし、その後企業の指示に従い応募書類を送付したり面接を受けるといったことは自分自身で行なう必要があります。
派遣会社の場合
派遣社員として働く場合には、まず派遣会社で登録を行います。
派遣会社によって登録方法に多少違いがありますが、一般的にはウェブ登録後、派遣会社に出向き本登録という流れになります。
その後、派遣システムについての説明、登録情報の確認などがありPCスキルチェックや一般常識のテストなどを受けます。
一連の登録事項が終了すれば、担当コーディネーターとの面談となり、勤務日数や勤務時間、仕事内容など自分の希望に合う仕事を紹介してもらえます。
あらかじめウェブサイトで検索して希望の案件がある場合は、
そのときに申し出れば調整してもらえます。
雇用形態
ハローワークの場合
ハローワークの求人は、企業と求職者自身が直接雇用契約を結ぶ「直接雇用」となります。
つまり、基本的に就業期限が設けられていない「無期雇用」として就業します。
採用後の給与は、企業から支払われることになります。
派遣会社の場合
派遣の仕事をする場合、派遣会社と雇用契約を結ぶことになります。
派遣先企業では、派遣会社のスタッフという立場で仕事をするという「間接雇用」の形態です。
給与の支払いも派遣会社からになります。
紹介予定派遣や無期雇用に該当する場合を除き、一般派遣は原則的に期限の定められた「有期雇用」となります。
現在の派遣法では、同一企業で働けるのは最長で3年間と定められています。
一般的には、3ヶ月、6ヶ月など数ヶ月ごとに契約を更新することになりますが、派遣先企業側で更新できないという決定になれば契約満了となってしまいます。
逆に派遣先企業が契約更新を望んでも、派遣社員側の事情で更新しないという選択もできます。
求人数
ハローワークの場合
ハローワークに掲載されている求人数は、時期的な増減はあるものの、派遣会社と比較すると桁違いに多くの案件を扱っています。
ハローワークの求人数が多い理由には、求人情報の掲載料が無料であることが挙げられます。
そのため人材採用に経費をかけることができない会社でも、利用が可能となっています。
求人を出している企業もあります。
これは、ハローワーク経由で人材を採用すると助成金がもらえるためと考えられています。
派遣会社の場合
派遣会社は、企業が求人募集をする際には費用が発生するため、求人数という点ではハローワークよりも少なく、ある程度人材の確保にお金をかけられる企業でなければ利用することが難しいようです。
取り扱い業種・職種
ハローワークの場合
ハローワークではさまざまな業種や職業を幅広く扱っており、その分類も日本標準職業分類を基に、大分類・中分類・小分類・細分類の4階層に区分し、管理されています。
派遣会社の場合
派遣会社の場合は、大手ではハローワーク同様に幅広い職種を取り扱っているようですが、規模が比較的小さな派遣会社では、「外資系」「ITエンジニア系」「製造・ライン系」「医療・福祉系」といった特定の業種や職種に特化している場合が多いようです。
給与、福利厚生
ハローワークの場合
ハローワークに掲載されている求人は、派遣会社の求人よりも給与が低い傾向にあります。
これは掲載料が無料ということと関係があるようで、事業規模が大きくない企業が掲載していることが多いため、全体的に給与が低くなっています。
ただし、一般的な派遣があくまで有期雇用であるのに対し、ハローワークを通じて就職をし、無期雇用の社員になれば安定した収入を得ることができ、最終的な収入は期待が持てる可能性も十分あります。
福利厚生に関しては、採用された企業にもよりますが、中小企業の場合では福利厚生が充実していない場合があると思っておいたほうがよいかもしれません。
派遣会社の場合
派遣会社はハローワークの仕事より時給が高く設定されている場合が多いですが、これは派遣社員の採用には企業が求めるスキルを持っていることが絶対条件となっていることと関係があるようです。
それにより、派遣先企業は必要な時に必要なスキルを持つ人材を派遣してもらうことが可能となっているのです。
正社員で同様の人材を採用するときの費用と手間を考えると、多少高い給与でも派遣会社を利用することのほうが効率的に人材を確保できる手段なのかもしれません。
派遣会社では福利厚生面でも充実しており、大手ではスキルアップ研修や育児支援サービスなど、かなり充実した福利厚生を用意して派遣スタッフが安心して仕事できる環境を提供しています。
採用までの流れ
ハローワークの場合
ハローワークの求人に応募したいときは、通常以下のような流れになっています。
- まず窓口で、希望の求人の募集状況を企業に問い合わせてもらいます。
- 応募可能な状況であれば、「紹介状」を発行してもらいます。
ハローワークの求人に応募する際はこの「紹介状」が必要になります。 - 企業の指示に従って履歴書や職務経歴書などを揃え、
紹介状とともに送付し書類審査となります。 - 書類審査を通過した場合、応募先企業から連絡があり面接に進みます。
(残念ながら審査に通過しなかった場合はここで終了します。)
ただし場合によっては、履歴書・職務経歴書・紹介状を持参のうえ、そのまま面接に進むケースもあります。
- 面接の結果、採用・不採用が決定され、
採用となった場合は応募した本人が直接雇用契約を結びます。
派遣会社の場合
一方、派遣会社では概ね以下のような流れになります。
- 派遣会社で登録後、希望する条件に合った求人が見つかると
派遣会社のウェブサイトからエントリーをします。 - 同じ求人案件に応募者が複数いる場合や、
応募者のスキルに合っているかどうかなど派遣会社内で選考があります。 - 通過した場合は担当者より連絡があり、
希望の求人についての詳細や先方に話を進めてよいかどうかの確認があります。 - この段階で問題がなければ、
派遣会社から企業に応募者の履歴書や職務経歴書などの情報が伝えられます。 - 企業側から前向きな返事がもらえたら「顔合わせ」に進みます。
ここで大事なことは、派遣先企業が派遣スタッフを学歴・性別などで選考することは派遣法で禁止されているため、顔合わせは面接や選考の場ではないということです。 - 顔合わせ当日は派遣会社の担当者と一緒に派遣先企業に向かい、
自分自身の簡単な職歴説明や業務についての詳細確認など、
双方の最終的な意思確認をします。
もしこの段階で自分の希望に合っていないと感じた場合は断ることもできます。
- 顔合わせの結果、双方合意となれば仕事がスタートします。
ハローワークと派遣会社のメリット・デメリットとは
ハローワークと派遣会社の違いが理解できたところで、
両者のメリットとデメリットを見ていくことにしましょう。
ハローワークは国が失業者を減らすために設置した機関であるのに対し、
派遣会社は利益を得なければならない民間の企業であるというところが
メリット・デメリットに反映されているようです。
ハローワークのメリット
- 求人数と取扱い業種、職種が多い
- ハローワークは失業者を減らすこと自体を目的とした機関であるため、スキルに自信がない人にも平等にサポートしてくれる
- 就業先から直接雇用されるため、契約期間を気にせずに働くことができる
ハローワークのデメリット
- ハローワークの業務は「仕事の紹介まで」であるため、
仕事を開始した後に困ったことが起きても基本的にフォローがない - 派遣会社にあるようなスキルアップのための無料セミナーなどがない
- 求人数は多いが、ハローワーク自体での求人の審査はないため、
中には質の悪い企業の求人が含まれていることもある
派遣会社のメリット
- 比較的時給が高い仕事を取り扱っている
- 信頼できると評価した企業や実績のある企業の求人を扱っている
- 仕事の紹介時だけでなく、仕事がスタートしてからもコーディネーターによるアドバイスや相談を受けられるなどフォロー体制が整っている
- 社会保険制度やスキルアップのためのセミナーといった支援制度が整っている
派遣会社のデメリット
- 一般派遣社員は有期雇用であるため、長期的に安定した収入を得るのは難しい
- 派遣会社の目的は、良い人材を良い企業に紹介することであるため
スキルのある優秀な人から優先的に決まってしまう場合が多い
派遣とハローワーク、どっちがいいの? まとめ
いかがでしたでしょうか?
派遣とハローワーク、どちらが良いのかは結局自分の希望に合った仕事を紹介してくれるほうを選ぶのがよいということになりそうです。
少しずつ経験を積んで1つの会社に長く勤務して安定した収入を望むならハローワーク、ある程度のスキルを持ち、短いスパンでさまざまな企業で経験したいのなら派遣会社というようにそれぞれの良さをうまく利用すれば、希望の仕事が見つかりやすいかもしれません。